1. はじめに:障害者差別解消法とは?
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律「障害者差別解消法」が、2024年4月から施行されました。webアクセシビリティについて、公的機関や民間企業に対する具体的な対応義務が強化されました。
「アクセシビリティ」という言葉はちょっと難しく感じるかもしれません。簡単に言えば、「誰にとっても使いやすいサイトを作ること」がアクセシビリティの目的です。
例えば、色覚に特徴がある方が読みやすい色の組み合わせや、視覚に頼らず内容が伝わるようにする工夫は、特別なことに思えるかもしれません。でも実際は、少しの工夫でサイト全体がグッと使いやすくなります。
さらに、アクセシビリティ対応をしていると、SEO効果も期待できます。検索エンジンも、ユーザーに優しいサイトを高く評価する傾向があるため、アクセスアップにもつながります。
つまり、アクセシビリティを意識することは、デザイナーとしてより多くの人にサイトを届ける力にもなるんです。デザイナーとしての「思いやり」が活かされる部分でもあるので、ぜひ少しずつ取り入れてみましょう。
この記事では、障害者差別解消法の基本と、具体的に実践できる対応ポイントについてざっくりと解説します。
2. 障害者差別解消法の概要
「障害者差別解消法」は、障害を持つ人が、健常者と同じように社会の中で平等に生活できる環境を整えるための法律です。この法律の大きな目的は、「誰もが自分らしく過ごせる社会を作る」こと。具体的には、障害者が不便を感じたり、参加しづらく感じたりする状況を減らすためのルールを定めています。
「合理的配慮」とは?
「合理的配慮」とは、障害のある人が不自由なくサービスや設備を利用できるように、必要な調整やサポートを提供することを指します。例えば、視覚に障害がある方には画面読み上げに対応したテキストを用意したり、色覚に配慮したデザインを選んだりといった対応です。これは「無理のない範囲でのサポート」という意味でもあり、デザイナーにとっても実践しやすいものが多いです。
「障害を理由とする差別」とは?
これは、障害があることを理由に不利な扱いをしたり、サービスの利用を制限したりすることを指します。Webデザインの分野では、視覚や聴覚に障害がある人でもサイトが使えるようにしていない場合、無意識のうちに障害を理由に差別してしまうことがあります。だからこそ、この法律を知ることが大切です。
Webデザインにおける影響:デザイナーに求められるアクセシビリティ対応
この法律がWebデザイナーに関係するのは、「合理的配慮」を提供するためのデザインが求められるからです。色やフォント、レイアウトの選び方によって、誰でも快適に使えるサイトにすることができます。また、アクセシビリティ対応をすることで、検索エンジンからも評価され、アクセスアップにもつながるのが嬉しいポイントです。
アクセシビリティを意識したデザインは、最初は少し手間かもしれませんが、結果的に多くの人にとって優しいサイトが作れます。これからデザインを学ぶ上で、アクセシビリティはぜひ身につけていきたいスキルのひとつです!
3. 初心者Webデザイナーが取り組むべきアクセシビリティ対応
それでは、具体的にどのように取り組んでいけばよいのかを見ていきましょう。
1. 色覚に配慮したカラーデザインを採用する
色覚に特徴がある方は、赤と緑、青と黄色のような特定の色を見分けにくいことがあります。そのため、色を使うときはコントラストに気を配ったり、色だけでなくアイコンや文字の違いでも情報が伝わるようにデザインしましょう。例えば、ボタンの状態を色だけで示すのではなく、テキストやアイコンを追加することで、視覚的な理解が深まります。
カラーアクセシビリティについては以下の記事で詳しく触れています↓
2. 画面リーダーに対応したサイト構造
視覚に障害のある方がWebサイトを利用する際、スクリーンリーダーというツールがテキストを読み上げて情報を提供します。そのため、スクリーンリーダーに対応した構造を意識することが重要です。具体的には、見出しタグ(h1、h2など)を使ってページ構造を整理したり、リンクには「こちら」などではなく、リンク先の内容を分かりやすく示すテキストを入れると効果的です。
スクリーンリーダーについては以下の記事でも触れています↓
3. Alt属性で画像の情報を補足
画像を使う場合、代替テキスト(Alt属性)を設定することで、視覚に頼らずに画像の内容が伝わります。例えば、商品の写真であれば「赤いセーターの写真」のように具体的な説明を入れることで、視覚に障害のある方にも内容が理解しやすくなります。
Alt属性については以下の記事も参照してください↓
4. フォントや文字サイズの選択
小さすぎる文字や読みにくいフォントは、すべてのユーザーにとって負担になります。文字サイズを十分に大きくし、シンプルで読みやすいフォントを選ぶことで、視覚的な負担を軽減しましょう。また、行間や文字間隔も適切に設定すると、さらに読みやすさが向上します。
タイポグラフィについてはこちらでも触れています↓
4. アクセシビリティ対応のメリット
アクセシビリティに対応することで生じるメリットについて見ていきましょう。
アクセシビリティ対応は、障害のある方や色覚多様性者の方だけを対象にするものではありません。障害の有無に関わらず、すべてのユーザーが使いやすいサイトを目指すことができます。
例えば、見出しタグを整理して画面リーダーが内容を把握しやすくする、色のコントラストを調整して視認性を上げるなど、シンプルな工夫が誰にとっても快適な体験を作り出します。
読み上げ機能は、視覚に障害がある方だけが使うものではありません。Amazonのオーディブルは、世界最大級のオーディオブックおよび音声コンテンツ制作・配信サービスですが、2022年には利用者が前年に比べて32%増加したとの発表があります。
移動中や家事の時間に本を聞くことができるという利便性が大きく評価されています。
iPhoneには、ブラウザ読み上げ機能があり、手を離せない時や隙間時間、移動時間などに、ニュースや記事を読み上げてもらう使い方が広がっています。
参考:手が離せないとき、iPhoneにWEBページを読み上げてもらうワザ
ブラウザ読み上げ機能に対応することは、こういったユーザーのニーズに答えられるということです。
また、SEOにも効果的です。検索エンジンは、ユーザーにとって使いやすいサイトを高く評価する傾向があり、アクセシブルなサイトは「ユーザー重視」の姿勢が反映されるため、検索順位にも良い影響が期待できます。例えば、Alt属性で画像内容を説明すると、検索エンジンも画像の内容を理解しやすくなり、関連キーワードでの表示が増える可能性もあります。また、見出しやリンクの構造が整理されていると、検索エンジンもサイトの内容を把握しやすくなるため、結果として検索上位に表示されやすくなるでしょう。
企業やWebデザイナーとしての信頼性アップにもつながります。「どんな人でも利用しやすいサイト作り」に取り組む姿勢は、ユーザーに対する思いやりを示すものです。その結果、企業やデザイナーが社会的な配慮を欠かさない存在として認識され、ブランドイメージの向上につながります。また、アクセシビリティを重視することで、新規ユーザーだけでなく既存ユーザーのリピート訪問も期待できます。信頼できるサイトは、ユーザーにとって「また訪れたい」と思わせる大きな要素になります。
5. まとめ
「障害者差別解消法」に基づくアクセシビリティ対応は、Webデザイナーにとって重要な取り組みです。この法律は、障害がある人も含め、すべての人が平等にサイトを利用できるようにサポートすることを求めています。合理的配慮を取り入れることで、ユーザビリティが向上し、SEOにも良い影響を与え、企業やデザイナーとしての信頼性も高まります。
アクセシビリティ対応は、特別なスキルが必要というわけではなく、初歩的な工夫からでも始められます。色のコントラストやAlt属性、見出しタグの整理など、取り組みやすい工夫がたくさんあります。こうした小さな配慮の積み重ねが、結果として多くのユーザーにとって快適なWeb体験を提供することにつながります。
アクセシビリティを意識したデザインは、すべての人にやさしいデザインです。ぜひ一歩ずつ実践してみて、誰にとっても心地よいサイト作りに役立ててください。
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