ゲシュタルト心理学の基本とWebデザインへの活用

webデザインと心理学

1. Webデザインにおけるゲシュタルト心理学とは?

ゲシュタルト――と聞くと真っ先に思い浮かぶのが、「ゲシュタルト崩壊」という言葉ではないかと思います。これは文字などをじっと見ていると、ひとつひとつの文字が記号や形として見えてきてしまい、「意味をなさないものの集まり」に感じられることを言います。この「ゲシュタルト崩壊」という言葉は、「ゲシュタルト心理学」から出てきたものです。

ゲシュタルト心理学は、「人間が物事を全体として認識しようとする」という心理的な性質を研究する学問です。物事を個別のパーツではなく、「全体」として捉える傾向がある、ということですね。この心理学は、webデザインでも活用されています。

ゲシュタルト心理学には、要素を「全体として」見せるためのルールや法則がいくつか存在します。これらの「ゲシュタルトの法則」と呼ばれるルールは、情報を効果的に整理し、ユーザーにとって直感的にわかりやすいデザインを作るためのガイドラインとして活用できます。具体的には、「近接の法則」「類似の法則」「連続の法則」「閉鎖の法則」「共通運命の法則」などがあります。

この記事では、これらゲシュタルトの法則を初心者の方にもわかりやすく解説し、それぞれをWebデザインにどう取り入れるかの具体例を紹介します。

2. ゲシュタルトの法則とは?Webデザインに役立つ5つの法則

Webデザインに特に役立つ5つのゲシュタルトの法則「近接の法則」「類似の法則」「連続の法則」「閉鎖の法則」「共通運命の法則」について、それぞれを実際のデザインにどう活かせるかを見ていきましょう。

1. 近接の法則(Proximity)

近接の法則は、「近くに配置された要素同士は、関連性があるものと認識されやすい」という法則です。Webデザインにおいては、関連する項目を近くに配置することで、ユーザーが自然とそれをグループとして捉え、情報をスムーズに理解できるようになります。

例:メニューの配置
ナビゲーションメニューでは、似たカテゴリーのメニュー項目を近くに配置し、それ以外の項目とは適度な余白をとって区別すると、ユーザーは各メニューのまとまりを自然に認識できます。また、カード型デザインのレイアウトでは、カード同士を近づけて配置することで、関連するコンテンツのまとまりを強調できます。

近接の法則

2. 類似の法則(Similarity)

類似の法則(または類同の法則)は、「形や色が似ているものは、関連性があると認識されやすい」という法則です。デザイン内で色や形を統一すると、視覚的に一貫性が生まれ、ユーザーは関連する情報がひとまとまりになっていると感じやすくなります。

例:アイコンやリストのデザイン
例えば、商品一覧ページで同じカテゴリーの製品に同じアイコンやカラーを使うと、ユーザーはそれらを直感的に同じグループとして認識しやすくなります。また、箇条書きリストなどでも、アイコンや文字色を統一することで情報が整理され、よりわかりやすくなります。

ビジュアルデザインにおける類同の法則

3. 連続の法則(Continuation)

連続の法則は、「人は視線を誘導する線や流れに沿って要素を見ようとする」という法則です。この法則を使えば、Webページの中でユーザーの視線を特定の方向に導き、必要な情報や行動ポイントに自然に誘導することができます。

例:情報の流れを作るナビゲーション
ランディングページや製品説明ページでは、情報が順に流れるようなレイアウト(縦の流れや矢印など)を使うことで、ユーザーの視線を上から下へ、もしくは横方向に自然に誘導できます。たとえば、ステップごとの解説やチェックアウトフローのデザインでは、視線の流れを意識することで、ユーザーが次のステップにスムーズに移行しやすくなります。

連続(ゲシュタルト原則)

4. 閉鎖の法則(Closure)

閉鎖の法則は、「囲まれた空間や形は一つのまとまりとして認識されやすい」という法則です。Webデザインでは、コンテンツを枠や囲みで囲むことで、情報をまとまりとして強調し、ユーザーに「ここが重要なエリア」という印象を与えやすくします。

例:CTAボタンやカード型レイアウト
閉鎖の法則は、ボタンやカード型デザインでよく使われます。例えば、CTAボタンを枠で囲むことで、ユーザーにとって「クリックすべきポイント」が明確になり、行動を促しやすくなります。また、関連コンテンツをカードで囲んでまとめると、ユーザーが情報のグループを一目で理解しやすくなります。

閉合(ゲシュタルト原則)

5. 共通運命の法則(Common Fate)

共通運命の法則は、「同じ方向に動いたり、同じ変化をしている要素は、関連性があると認識されやすい」という法則です。Webデザインでは、動きのあるデザインでユーザーの視線を引きつけ、関連する情報に視線を誘導するのに役立ちます。

例:スクロールアニメーションやアイコンアニメーション
スクロールに合わせて動くアニメーションや、関連するアイコンが同じ動きをする場合、ユーザーはそれらを同じカテゴリーや流れとして認識しやすくなります。例えば、ページの要所で表示されるアイコンが同時に動くことで、重要なメッセージや行動ポイントに視線が集まりやすくなります。

ゲシュタルトの法則をWebデザインに取り入れることで、ユーザーが視覚的に「直感的に理解できる」デザインを作りやすくなります。

共通運命の法則

次章では、さらに実践的なWebデザインの具体例を通じて、これらの法則がどのように使われているかを解説していきます。

3. ゲシュタルトの法則を使ったWebデザインの実践例

ゲシュタルトの法則は、実際にWebデザインにどのように活用できるのでしょうか。この章では、Webデザインでよく見られるレイアウトやUIの具体例を通じて、ゲシュタルトの法則がどのように使われているのかを見ていきます。

1. ナビゲーションメニューの配置:近接の法則と類似の法則の活用

ナビゲーションメニューは、ユーザーにとってサイトの内容や構造を把握するための重要なツールです。メニューにおいて、近接の法則類似の法則を活用することで、ユーザーにとって使いやすく、直感的に理解できるデザインが作れます。

実例
例えば、ドロップダウンメニューで、関連性のある項目を近くに配置し、同じスタイルのアイコンや色を使うと、ユーザーはそれをひとまとまりの情報と認識しやすくなります。また、カテゴリーメニューでも、よく似たデザイン要素を使い、近くに配置することで、ユーザーがメニューの各項目を自然にグループ分けして捉えられます。これは特に、ECサイトなどで商品カテゴリーの一覧を整理するときに便利です。

2. CTAボタンやフォームのデザイン:閉鎖の法則の活用

サイトに訪問しているユーザーに行動を促すためには、CTA(コールトゥアクション)ボタンや入力フォームのデザインが重要です。ここで活用できるのが閉鎖の法則、CTAボタンやフォームの枠を強調することで、ユーザーに「ここをクリックするべき」「ここに入力するべき」と視覚的に伝えることができます。

実例
例えば、CTAボタンを際立たせるために色や形で枠を作り、その周りに余白を多めにとると、ユーザーはボタンを自然にクリックしたくなります。また、入力フォームに区切りをつけたり、囲いを入れることで、ユーザーはどこに情報を入力すれば良いかを視覚的に認識しやすくなります。

3. カード型レイアウト:近接の法則と類似の法則の応用

ブログやニュースサイト、商品ページなどでよく使われる「カード型デザイン」は、近接の法則類似の法則を組み合わせた代表的な例です。このデザインでは、各カード内に情報を整理し、視覚的に一貫性を持たせることで、ユーザーは一つのカードを「まとまり」として捉えやすくなります。

実例
たとえば、商品リストをカード型レイアウトで並べる場合、カードの形や背景色を統一し、各カードの間隔を均一に配置すると、ユーザーはそのカードが「関連する情報の集合」として認識します。このレイアウトは、商品や記事の一覧を表示する際に視認性が高く、ユーザーが情報を素早く把握できる利点があります。

4. 情報の流れを作るランディングページ:連続の法則の活用

ランディングページでは、製品やサービスの紹介をスムーズに伝えるため、連続の法則を利用したデザインが有効です。情報が自然に流れていくように要素を配置し、視線を特定の方向に誘導することで、ユーザーはスムーズに情報を読み進め、最終的なアクション(購入や申し込み)に移行しやすくなります。

実例
縦長のランディングページで、各セクションを順番に並べ、視線が上から下へと自然に流れるようにすると、ユーザーはコンテンツを読み進めやすくなります。また、矢印や連続したアイコンを配置することで、ユーザーの視線を次の情報へと導き、ページ全体に一貫した流れを作り出せます。

5. スクロールアニメーションや動きのあるアイコン:共通運命の法則の応用

共通運命の法則は、動きのある要素を関連付ける際に使えます。例えば、スクロールアニメーションや動きのあるアイコンを使うと、ユーザーの視線が動きに沿って誘導され、関連する要素を「まとまり」として捉えやすくなります。

実例
ページをスクロールしたときに関連するアイコンや要素が同じ方向にアニメーションする演出をすると、ユーザーはその要素を関連付けて見やすくなります。また、FAQや手順ガイドの項目が一斉に開閉するような動きをする場合、ユーザーはそれらの情報が「同じグループに属している」と直感的に感じるため、情報の流れがスムーズになります。

このように、「ゲシュタルトの法則」はwebデザインにおいてとても有益です。
ですが、やみくもに取り入れればよいというわけではありません。

次は、ゲシュタルトの法則を取り入れる際の注意点についてみていきましょう。

4. ゲシュタルト心理学を取り入れる際の注意点

ゲシュタルトの法則は、ユーザーにとってわかりやすく直感的なWebデザインを作るための強力なツールです。しかし、これらの法則を効果的に使うためには、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。ゲシュタルト心理学を取り入れる際に気をつけたいポイントを見ていきましょう。

1. 過剰な強調やグループ化は混乱を招く

ゲシュタルトの法則を使ってデザイン要素を強調しすぎたり、過剰にグループ化しようとすると、ユーザーの混乱を招く恐れがあります。たとえば、関連性の低い要素同士を無理に近づけたり、似たスタイルにしすぎると、ユーザーはその情報を誤って認識しやすくなります。

対策
ゲシュタルトの法則を取り入れる際は、各要素の関連性や情報の優先度を確認し、本当に必要な部分だけに法則を適用するようにしましょう。例えば、重要なCTAボタンやフォームには閉鎖の法則を使って強調しつつ、それ以外のボタンには控えめなデザインを採用するなど、メリハリを意識すると良いでしょう。

2. デザインの一貫性を保つ

Webサイト全体でデザインの一貫性を保つことも重要です。ページごとに異なるゲシュタルトの法則を強調しすぎると、ユーザーが使い慣れたレイアウトや視覚的なルールが崩れ、戸惑ってしまうことがあります。一貫性のないデザインは、ユーザーにストレスを与えやすく、離脱率の上昇につながる可能性もあります。

対策
一貫性を保つために、色やフォント、ボタンの形状、間隔の取り方を統一し、ゲシュタルトの法則をサイト全体で均等に適用することを意識しましょう。ナビゲーションやフォーム、CTAボタンなど、特定の要素についてはサイト全体でデザインを揃えることで、ユーザーはページが変わっても迷うことなくスムーズに操作できるようになります。

3. ユーザー体験を第一に考える

ゲシュタルトの法則はデザインをわかりやすくするためのツールですが、最終的にはユーザー体験(UX)を向上させることが最も重要です。法則にこだわりすぎて、ユーザーにとって重要な機能が目立たなくなってしまったり、理解しにくいレイアウトになってしまっては本末転倒です。

対策
デザインの意図がユーザーにとってわかりやすいかどうかを常に意識しましょう。ユーザーの視線誘導や操作性を確認するためにユーザーテストを行うのも良い方法です。また、ゲシュタルトの法則を使ったレイアウトでユーザーが意図通りに操作できるかを試し、改善点があれば微調整を加えましょう。

4. 重要な情報には適度な余白を取る

ゲシュタルト心理学を適用して、要素を集めて整理するのは効果的ですが、余白(ホワイトスペース)の使い方にも気を配る必要があります。余白が少ないと、デザインが窮屈に見えたり、視覚的な疲労を招く恐れがあります。

対策
余白は、デザインの「呼吸スペース」と考え、特に重要な情報やボタンの周りには適度な空間を設けましょう。重要な情報が余白で強調され、ユーザーが自然とそこに注目することで、より快適なデザインに仕上がります。

以上のような注意点を押さえることで、ユーザーが心地よくサイトを操作できるデザインが実現できます。

5. 最後に:ゲシュタルト心理学を活かしたわかりやすいWebデザイン

ゲシュタルト心理学を取り入れることで、Webデザインは単に「見た目が良い」だけでなく、ユーザーが直感的に「わかりやすい」「使いやすい」と感じるものに変わります。ユーザーが情報を自然に理解できるようにするため、Webデザインの現場では「近接の法則」「類似の法則」「連続の法則」などのゲシュタルトの法則が活用されており、デザインの質を大きく高めています。

ゲシュタルト心理学を活用するポイント

  1. 近接や類似の法則で情報をグループ化する:関連する情報を近くに配置したり、同じスタイルで統一することで、ユーザーが情報を一目で理解しやすくなります。
  2. 連続の法則で視線誘導を行う:視線の流れに沿ってデザインを配置することで、ユーザーが自然に次のアクションに進みやすくなります。
  3. 閉鎖の法則や共通運命の法則で、強調とまとまりを生む:ボタンや重要な情報に囲みや動きを加え、ユーザーが注目しやすいデザインを作りましょう。

webデザインを勉強し始めたばかりの方にとって、「心理学」と聞くとかなり難しそう・上級者向けだと感じられるかもしれませんが、ゲシュタルトの法則を取り入れることは、それほど難しいことではありません。

基本のルールを理解し、まずはメニューやCTAボタンなど、取り入れられそうなところから少しずつチャレンジしていきましょう。使いやすいデザインを作れるwebデザイナーになろうと頑張るあなたを応援しています!

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